~北山三村「住んでみたい」移住者インタビュー~

鴨川源流・雲ケ畑の旧街道に、美しい陶器を作られている窯があります。「村田製陶所」作家の村田森(むらた・しん)さんと代表の榮木扶佐子(えぎ・ふさこ)さんにお話を伺いました。

 

“理想の仕事場を求めて”

「田舎暮らしというよりも、仕事の場として雲ケ畑を選びました。」京都市出身で、以前は修学院で活動されていた村田さん。ご自身で窯を持ち制作に専念できる仕事の場を求めていました。窯を扱える環境と、京都市内の都市部とも交流できる距離を理想としてあちこちの山間部を探していましたが、雲ケ畑にいた知人から空き家になっていた古民家を紹介されてこの場所を見つけたそうです。周囲が山に囲まれていて、周りへ配慮しながら窯を焚くことができる環境と、工房、居住スペース、スタッフが住み込みできる建物が揃っていたのでここに決めました。市内中心部から車でわずか30分程度の距離にある、この環境との出会いでした。

村田さんの工房

“はじめは戸惑いもありました”

2003年に雲ケ畑に移住された当初、山村地域での暮らしに馴染むまでは様々なご苦労があったそうです。まずは古民家の改修です。残された荷物を片付けることから始まり、屋根裏に寝室を作って階段を付けたり、冬の寒さをしのぐ薪ストーブを設置したりして、時間をかけて生活の場を整えていきました。かやぶき屋根はメンテナンスが大変なことから、トタンをかけたままにしています。昔の家のよさを残しながら、無理なく現代の暮らしに合わせて住みこなしておられて、素敵なセンスを感じるお住いになっています。

また、山村地域ならではのルールや地域活動に慣れるまでも戸惑いがあったそうですが、雲ケ畑小中学校(2012年から休校)から依頼を受けて生徒たちに陶芸教室をしたことをきっかけに、地域住民の方々との交流が増えていったそうです。窯を焚くために大量に必要な薪づくりは、地域の方も協力してくださるとのこと。榮木さんは村田製陶所のマネジメントをしながら、雲ケ畑女性部の活動にも参加され、地域に溶け込む努力をされています。

古民家を改装したご自宅

“それでも、何にも代えがたい宝物”

「雲ケ畑街道に入った瞬間に、空気ががらりと変わるんです。」雲ケ畑の大きな魅力の一つは、都市部の近くにありながら豊かな自然に恵まれているところ。工房での仕事中に聞こえるのは、鴨川のせせらぎや鳥のさえずりです。

いっぽうで、体力が必要な日々の暮らしや、冬の寒さ、大雨が降れば倒木で道が塞がってしまうなど、自然の中で暮らすことには苦労も絶えません。「それでも、厳しい冬を乗り越えて春を迎えた時の喜びなど、何にも代えがたいものがあります。」と榮木さん。街道沿いの山を眺めるとき、雲ケ畑の山道を散策するとき、四季の移ろいを感じるそうです。玄関には、村田さんの作品とともに季節のお花が添えられていて、豊かな自然を大切に暮らしの中で楽しまれている様子が伝わってきました。

村田さんの作品と季節のお花

“多くの人が訪れる雲ケ畑にしたい”

村田さんは現在、陶芸のルーツである韓国にも工房を持ち、雲ケ畑と行き来しながら制作活動をされています。世界を見ながらも、人手が入らなくなった山や不便になっていく交通、過疎化など、雲ケ畑の将来のことを気にかけています。「いつか、鴨川源流のこんな場所で制作しているということや、雲ケ畑を大切に暮らしている村人たちのことも知ってほしい。魅力的な雲ケ畑にもっと人に来てもらえるような取り組みもしてみたい。」とお二人は語ります。

村田さんのご自宅にあるギャラリー

大切な仕事場である雲ケ畑。その豊かな風景を作る一歩として、お住まいの裏山には桜や桃の木が植えられていました。「いつかこの桜の木の下で、仲間たちとお花見をしたい。」作家としてのお仕事を追求しながら、日々の暮らしを大切に思う村田さんと榮木さんの夢を聞かせていただきました。

自然の光に映える村田さんの作品

■村田森さんプロフィール

1970年京都生まれ。生活陶芸作家。陶芸家、荒木義隆氏の元で修業後、1998年に独立。2003年に雲ケ畑に工房を構える。2015年より韓国・務安での作陶をはじめる。

 

●村田さんのInstagramはこちら

https://www.instagram.com/muratashinwolf

 

●榮木さんのInstagramはこちら

https://www.instagram.com/kiibowbow