一株から何本も、何度だって。

北山林業の地、ここ中川のシンボルマークでもある「台杉」。

ひと株の幹から何本もの枝が分かれて育つその姿は、あらゆる可能性を感じさせる。

何本も、何度だって、自由に派生すればいい。幹の部分でしっかりと繋がっていればいい。
「台杉のように!」このマークには、自治会長として地域を代表して、石岡さんの想いがこもっている。

石岡さんご自身は会社員として務めたが、やはり「北山杉の里」中川。

お父様は、林業と木工業を営んでいた。
お父様の会社が作った中川丸太の小物の記憶がまだ残っている。
家には磨きの木肌が生かされたこけしや花瓶が。

そんなところにも、北山丸太の可能性がまだ秘められているのかもしれない。
中川にある資源はこれからも、台杉の枝葉のように派生していくのだろう。

杉景色の中川に、今日も「美味しい」色が添えられる。

玄関先に置かれたカゴいっぱいの栗の実、
家の軒先にずらりと吊るされた大根、
たわわに実った柚の実は、美しく輝いていた。

石岡さんの家は、「美味しい」ものでいっぱいだ!

家の後ろの畑には、色々な葉野菜が寒さの中、ぎゅっと美味しさを蓄えて瑞々しく育っている。

北山林業の全盛期には、お家の畑まで杉の苗床になることも少なくなかった。
こんなに畑や庭木の充実したお家は案外少ないようだ。

秋の栗は、放っておけば地面に落ちて、全部動物の餌になってしまう。
だから、高枝切りハサミで一つひとつ収穫。イガを取っては実を取り出して、自分の手で料理する。

石岡さんは、料理好きである!

庭先や畑、山で採れた季節ごとの収穫物は、どれも丁寧に料理して地元の人へも振舞われる。

白味噌ベースで煮込んだ大根の煮物は、摺りおろしたゆずの風味が効いている。
ここ2~3年前からは、柚ジャム作りも始まった。

「まぁ、面倒くさいけどな~」と笑いつつも、美味しさへの研究は終わらない。
熟した果皮、若い果皮、果汁入り・・・アレンジを重ねている。

食材は作り手の手間と気持ちがこもって始めてごちそうになるのだと、石岡さんのお料理をいただいて思う。

手作りのお料理を囲んでした宴会は、何だかとても温かかった。

人が集まる「場」をつくりたい。

「昔は常会と呼ばれる集まりがあって情報共有できていたが、それは職業や生活の変化から無くなってしまった。
現代の生活様式にあった情報共有の場づくりを模索したい。」

こんな想いを語る石岡さん。

地域の人が集まる場は、自治会だけでないだろう。
秋の宴会では、会長手作りの料理を囲んで、地域の情報共有の場が出来上がった。
これも石岡会長の有言実行の一つの形である。