「景観10年、風景100年、風土1000年」

「先日、古本屋でこんな本を見つけましてね、こんな言葉があるんです。景観は10年で作れる、自然を含めた風景は100年かかってつくられる、そして文化やそこにある暮らしを内包する風土というのは、1000年かけて醸成される。我々の土地は、平安京を造るときから杣人が住んできた。洛中は何度も戦火で焼け人も入れ替わったのに、雲ケ畑などはずっと残ってきた。我々は生粋の都人。この辺境の土地だからこそ、文化が残ったんです・・・ね」。

 

昭夫さんのお話を聞いているといつも、いつの間にか1時間や2時間は経ってしまう。
歴史と哲学を熱く語るのは、雲ケ畑集落の入口に住んでいる安井昭夫さん。
行政職員を引退後、今は雲ケ畑のまちづくり、歴史調べに懸命。
歴史好きではあるがそれは純粋な史学ではなく、「講談歴史」というものだそうだ。

 

雲ケ畑に山林を所有し、街の学生とともに山づくり・山仕事に取り組んでいる。
雲ケ畑の山主3人で「雲ケ畑コモンズ・結い林業組合」を結成し、山仕事の請負、薪作りも実践中。
3人はともにドイツ林業の視察にも行き、山で得た収入を現地でのお小遣いにしたそう。

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【雲ケ畑コモンズ・結い林業組合」のトリオ】

彼も雲ケ畑の風景・風土をつくっている一人だ。

雲ケ畑のくらしを守るには、経済をつくることが必要だと、
木だけでなく、山に生える植物の枝葉、その他諸々を商品化できないか…彼の挑戦は続く。

 

「知らないことは、知るに限る。」

【昭夫さんの読んだ本。びっしりと付箋が・・・】

「この本もぜひ読みなさい」と、最近の読書本が出てくる。

赤、黄色、緑、カラフルな付箋がびっしり。
暇を見つけては京都市内の古本屋を巡って資料収集にいそがしい。
ジャンルは歴史、科学などなど様々。
そこから独自の「昭夫理論(!?)」が生み出される気付きもいくつかあったようだ。

 

「悩みを消すには、知らないことを知るに限る。だから私は本を読む。」

何事も調べて、考えて、書いて、そして言葉に残すことのくり返し。
どうやらたまらない魅力があるらしい。

 

「辺境の地に文化が残ったのです…ね?残します。」

自分にできること、それは彼にとって、言葉にして残すことらしい。

 

自分の言葉をしっかりと芯に持ち、語る人の多い雲ケ畑。
今日も哲人たちの声が、村のあちこちで聞こえてくる。