“北山林業のある景色を伝えたい”小阪隆治さん
■昔の山ではなぁ、こういう事をしとったんや
山一面に台杉が広がる景色を見つめて、「ここからの眺めが一番や。」と一言。
長年、銘木屋で働いてきた小阪さん。彼は北山林業の地である中川に、誰よりも誇りを持っているのだろう。
「伝統的な北山杉美林帯をイベントを通じて広めていきたい!」
そんなmyビジョンを掲げてこの日も、寒空の下黙々と準備に勤しんでいた。
12月上旬、この中川に約30人の小学生とその親御さんが集まった。
北山林業の魅力を伝えたいという思いを持った地域の人々が集まって、山遊び体験のイベントを企画したのだ。
街からやって来た子供たちはまず、この台杉の美林が広がる山で、山仕事を体験した。
子供たちが寒いだろうと、焚き火の準備もばっちり。
たくさん遊んでお腹が空いたら、焚き火で魚を焼いて、丸太の上に座って、みんなでお昼ご飯。
焚き火にはヤカンをくべて、作業で濡れた軍手を周りに干して、
「むかしは山で、こういうことをしとったんやで。」と語り継ぐ。
北山林業の象徴とも言える、丸太磨きの体験もした。
クリスマス前のこの時期だから、取ってきた杉の葉ではリース作りに挑戦した。
磨き丸太の端材を使った贅沢な木工遊びも楽しんだ。
休校になった小学校で木工体験をしている様子
木工キットなどなくとも、子供たちは無限の発想で遊ぶ。
山の水の冷たい感覚、みんなで食べたご飯の味、焚き火の周りの団欒、自由に木工で遊んだ時間。
きっと子供たちの思い出に残っていくことだろう。
杉の葉や、山で集めたツタ、焚き火の薪に、山の水、それから、中川に残る北山林業の文化。
これは全部、地元にある材料でつくった手作りのイベントだ。
地元には当たり前に転がっている材料であっても、「これも見せてあげたい」と、
伝えてあげる小阪さん達の存在があってこその交流なのだろう。
こんな山遊びを伝えるイベントも、今では毎年の定例イベントになっている。
■これはあんたらに使ってほしいんや
中川の女性の作業着姿を再現!
ある日小阪さんが、中川の女性が来ていた山仕事の作務衣を下さった。
「これはうちの母親のもんやけど、うちの娘らも、もう着ることはないし。
あんたらのような若者に使ってほしいんや。
これを使って、中川のPRをして、林業のことをもっと広めたってくれ。」
かつて小阪さんのお母様がお持ちだった衣装が、その言葉と共に我々若手へと託された。
さて、素敵な衣装をもらって着てみるものの、ハンテン、タチカケ、マエカケ、手ぬぐい。
それぞれ、当時の着こなし方が分からない。小阪さん達地元の方々に、かつての女性たちの様子を教えてもらう。
「こうして足元を弛ませて着るのがおしゃれやったんや。」
「タチカケのスリットからワンポイントになる色を見せて、おしゃれしてはったんや。」
そんな言葉を頼りに、当時の女性たちの姿が再現される。
この衣装を来た女性たちが丸太を磨く姿も、景色の一部だったのだろう。
中川にてイベントを企画する小阪さん達と一緒に、我々も一緒に、中川の文化を伝えていこうと思うのである。